昨今、身近なサービスにAIの技術が導入され、私たちが直接目にすることも増えました。
AIの技術は、自動運転や音声翻訳、ホームページ上のチャットボットだけに利用されているのではありません。企業を内側から支え、躍進を後押しするポテンシャルがAIにはあります。
今後、AI技術の導入は、企業の成長戦略には欠かせないものとなるでしょう。本記事では、AIの現状やメリット・デメリットを交えて、弊社事例を元に導入方法を解説します。
企業がAI導入する際の基礎知識
AIを導入するにあたって必要な基礎知識をご紹介します。専門家に任せるだけではなく、企業の経営者や自社の担当者もAIの基礎知識を持っておくことで、AI導入の際に効果的な運用が期待できます。AIの特性を掴んで「どのような情報をAIに与えるのか」「どのような情報を集めると効果的か」について詳しく知っておきましょう。
AI、ディープラーニング、機械学習の概念について
最初に、AI・ディープラーニング・機械学習という3つの概念の違いを押さえておきましょう。
AI(Artificial Intelligence)は人工知能とも呼ばれます。AIは機械でありながら人のように判断し、行動できるソフトウェアやハードウェアです。
機械学習は、AIの学習方法を指します。人のような判断をするにあたって、根拠となる情報を学習する手段です。より多くの情報を学習したほうが、AIの精度は高まります。例えば、顔を見分けるには「輪郭やパーツに注目する」といった指示を人が行うと、大量の写真からAIが輪郭やパーツの学習を積み重ねていきます。
ディープラーニングは機械学習の一種です。近年、AIが注目されるきっかけにもなりました。ディープラーニングは「ここに注目するべき」と教える必要がありません。膨大な量のデータを分析することで、それぞれの違いを機械が自ら分類していきます。特にディープラーニングは、画像解析に飛躍的な進歩をもたらした学習方法です。
導入するAIの種類について
AIの導入には既存の「Web API」を使う方法と、独自開発する方法があります。
Web APIとは、AIシステム・ソフトウェア開発者向けに公開されているWeb上のサービスです。アプリやシステムからWeb APIに対してデータを投入すると、何らかの回答を返答するインターネット上のサービスとして提供されています。様々な企業からAI関連のWeb APIが提供されていますが、以下で、おすすめのWeb APIを4つご紹介します。
Web API 提供元 | AI関連のWeb API |
Google Cloud Platform (GCP) | AIビルディングブロック |
Amazon Web Services (AWS) | AWS AIサービス(Amazon Rekogitionなど) |
Microsoft Azure | Azure Cognitive Services |
IBM Cloud | Watson API |
画像判定や音声認識、翻訳、パーソナライズといった機能が利用できます。膨大な情報をもとに、各社がトレーニング済みのAIを提供しています。ただし、判定できる機能は限られているため、用途によって使い分けることが必要です。AIの精度が100%になることはありませんが、AI導入がうまくいっている企業は、あくまでも補助的な役割として活用しています。
通常、Web APIを活用しつつ自社向けにAIエンジンの開発を行いますが、Web APIでニーズにあったAIが見つからないのであれば、独自開発を選択しましょう。
Varealでは上述のWeb APIを活用したAIシステムの構築を支援しています。
VarealはAWSのSelect Consulting Partnerです。
AI導入の現状
AI導入の現状について、日本と世界の観点から見てみましょう。
日本におけるAI導入状況
日本での導入実績は、まだまだ少ない状況です。
総務省の「令和2年版 情報通信白書」によると、 IoT(※)・AIを導入している企業は全体の14.1%、導入予定がある企業は9.8%です。
IoT・AIによるデジタルデータの利用目的は「効率化・業務改善」が最も多く、次いで「顧客サービス」「事業の全体最適化」とのことです。つまり、AIの導入企業は事業の売上・経費に直接アプローチしようとしていることが推測されます。
また、AIの導入企業は高い効果を実感しています。
IoT・AIの導入効果は「非常に効果があった」が19.9%「ある程度効果があった」が59.9%となり、AIの導入企業における約8割が効果を実感しています。
このように、まだまだAIの導入企業が少ないからこそ、効率化や業務改善を進めるにあたってAIを活用し、他社に先駆けたサービスを展開することも可能です。
参考:令和2年版 情報通信白書
(※)IoT:Internet of Thingsの略。モノとインターネットの橋渡しとして導入される技術。
世界におけるAI導入状況
アメリカや中国は、GoogleやアリババといったIT企業によるAI産業への投資や、機械学習のもととなる情報収集が盛んに行われ、AI先進国となっています。
これに危機感を感じた欧州は、個人情報を保護する「EU一般データ保護規則(GDPR)」といった対抗措置のほか、EU内で「データの単一市場」を目指して制度化を進めています。特にAI活用における法的・倫理的枠組みの策定に力を注ぎ、各国に先だってAI倫理を普及させることを目指しています。
日本はアメリカや中国・EUに後れをとっている状況です。グローバル戦略の一環として、AI導入に踏み切る選択も必要でしょう。
AIを導入するメリットとデメリット
AIの導入はメリットばかりではありません。デメリットも知ることで、安定的な運用を目指しましょう。ここではメリットとデメリットについて解説します。
メリット①生産性向上で費用の削減・人手不足の解消
AIの得意分野といえば、自動化が挙げられます。AIは規則性のある業務であれば、朝から晩まで同じクオリティで仕事をこなせます。人間に頼った業務は経験やスキル・その日の体調や精神状態によって左右され、生産性がばらつきます。一方AIには、連続業務によるミスも発生しません。
ほかにも、人間にとってリスクの高い仕事や手間のかかる仕事をAIに任せることができれば、人的負担を減らせるため人手不足の解消に繋がります。
日本の人口減少により、人手不足は今後さらに深刻化するでしょう。
そうなると、採用業務にコストをかける必要が出てきます。
そこで、AIを導入することで、採用における単純業務だけでなく、複雑な作業の予測ができます。
例えば、過去のデータをもとに理想の人材を見つけられます。
このように、採用業務にかかわらず、多くの業界・業種でAIの導入は重宝されるでしょう。
メリット②ビジネスモデルの刷新
自社サイトのデータをAIで分析し、分析結果をもとに顧客のニーズを掴んで満足度の高いサービスを提供することで、顧客獲得に繋げることができます。
大量のデータを使って顧客のニーズを把握するといったことも、AIの得意分野です。
例えば、アパレルブランドのLaxus(ラクサス)はAIを用いたサブスクリプションサービスを提供しています。
具体的には、月額6,800円で3万点にわたる海外の高級ブランドバッグからレンタルできるというサービスです。
そして、レンタルしているバッグに付いているICチップと、スマートフォンのアプリにあるGPS機能で位置情報を収集し、ビッグデータとして蓄積します。
そうして、蓄積したビッグデータを学習したAIが「エルメスによく来店する人にはエルメスのバッグをおすすめする」といったことができるのです。
結果、ラクサスのサブスクリプションサービスにおける会員の継続率は9割以上に至っています。
このように、AIの導入は、自社のビジネスを根本から覆すようなインパクトを与えるでしょう。
メリット③ミスや事故の防止
AIには、ミスや事故が起こりやすい状況を機械学習させ、似たような状況を検知してアラートを出すといった利用方法があります。アラート機能を利用することで事故が起きる前に対処が可能になるため、従業員の安全確保に役立ちます。ミスを予防して、商品の不良率を下げるといった取り組みにもつながるでしょう。
また金融業界では、クレジットカードの不正利用を検知するといった利用方法があります。具体的にいうと、不正取引が起きやすいパターンをAIが機械学習し、検知・アラートを行うことで被害の拡大を防ぐことが可能です。
デメリット①導入費用やシステム切り替えのコスト
AIの導入には、2つのコストが掛かります。
・運用人材コスト(知識面)
・初期コスト(導入資産)
運用人材コスト
AIの導入したシステムをうまく使いこなすには、従業員の教育が最低限必要です。
例えば、システムの使い方を説明するセミナーの開催や、AIにおける基礎知識を習得するための研修などです。
初期コスト(導入資産)
導入の初期段階は生産性向上やミスの軽減から産まれる利益額よりも、導入費用が上回ります。
AIに機械学習させるための情報収集を新規で行うときは、機械学習に要する期間も想定しておかなければいけません。
したがって、AIを利用することで得られる利益と、導入時や月々にかかるコストを天秤にかけて、損益分岐点を見据えた導入計画が求められます。
デメリット②既存業務削減による新規業務への転換コスト
AIに作業を任せると、既存業務が減る代わりに、新たな業務が発生します。
AIで既存の定型業務を削減する代わりに、よりクリエイティブな業務へのシフトが求められます。(リスキリングコストといいます)クリエイティブな業務は、まだまだ人の手を必要としています。
例えば、Amazonでは配達員や倉庫の管理を担っていた非技術員が、現在ではAIにかかわる技術の業務を行っています。
そういった業務転換には、育成コストが発生します。
AI導入でできることの一例
すでにAIが活用されている事例をご紹介します。御社の事業にマッチする内容があれば、導入のヒントになるかもしれません。
チャットボット・コールセンター | チャットボットは、Webサイト上でのお問い合わせにチャットで自動応答する機能です。FAQやマニュアルをもとに、最適な回答を導き出します。 コールセンターであれば、音声認識や音声合成技術を使って、導き出した答えをもとに、会話で応答します。 |
書類の作成・チェック | OCR(文字認識)技術を使って、紙の書類をデータ化したり、記載内容をチェックしたりできます。 AIの機械学習により、システムを使い続けることで業種ならではの知識が増え、記載内容のチェックにおける精度を上げていくことが特徴です。 |
製造業の検査・検品・仕分け | 画像認識技術を使った外観検査が可能です。傷や汚れを検査員のスキルに頼らず、均一にピックアップします。 AIカメラが品番や荷物の外観を判別し、仕分けを自動で行うことも可能です。 |
輸送計画の立案 | GPSを使った輸送実績をもとに、物量や到着時間を考慮した、効率的な輸送計画を立案します。輸送時間が短縮でき、ドライバーの負担軽減にも貢献します。 |
査定 | 不動産や車の査定に関して、過去の査定金額を学習し、スピード査定が可能になります。 |
無人レジ | AIを搭載したカメラが商品を判別し、購入金額を自動で表示します。 |
【弊社事例】AI導入の流れ
弊社事例における、ライオン株式会社様におけるAIの導入を参考に、導入までの流れをご紹介します。大手生活用品メーカーのライオン様は新規事業に取り組むにあたり、AIの導入を検討されていました。
関連記事:ライオン株式会社様 パーソナライズされたレコメンドAIの開発
AIコンサルティング
■課題の抽出
AIを導入するにあたり、最初に課題の洗い出しから始めます。解決したい要素をAIにとらわれず、できるだけ具体的に抽出します。
■AIに任せる範囲を決める
課題を解決するために、どこにAIを活用するのかを決めます。このとき、費用対効果が高い内容においてのみAIに任せましょう。
VAREALではコンサルティングを通して、AIの導入効果が高い活用方法をご提案いたします。
弊社事例 |
ライオン株式会社様には、課題抽出にあたって以下のようなリクエストをいただきました。 ①好みのレコメンドに必要な相関を見出す これらのリクエストをもとに、弊社にてAIの活用範囲をご提案し、開発準備を進めさせていただきました。 |
AIエンジンの開発・検証
■学習データを用意・学習開始
AIに機械学習をさせるため、学習データを用意します。機械学習には、既存データの流用も可能です。AIが効率的に機械学習をできるよう、データを調整し最適化を行います。
学習データが用意できたら、AIの機械学習を開始します。
■AIエンジンを構築しPoC(概念実証)を実施
学習データから目的に合ったAIエンジンを構築したら、精度の確認にPoCを実施します。
PoC(Proof of Consept)とは新しい技術やアイデア、コンセプトの検証を指します。つまりPoCで、AIエンジンを評価し、微調整を行います。
弊社事例 |
ライオン株式会社様からのリクエストに沿って、オンライン・オフラインでのアンケートを実施いたしました。「③設問数を減らし、UXを向上させる」というご要望に応えるために、アンケート収集のための専用アプリを開発しました。 PoCでは、キャンペーンによってAIエンジンとUXの検証を行いました。また、顧客からのフィードバックを分析するためのシステムも開発し、データ収集に生かしました。 最終的には、分析結果を視覚的にまとめ、今後の課題や提案事項を提供いたしました。 |
開発以降のフォローアップ
■AIの本格導入
PoCに問題がなければ、現場でAIの運用を開始します。AIは機械学習の量が増えるほど、判断の精度が上がります。本格運用後のデータもAIに取り込むことで、精度の高いAIへと成長させることが可能です。
また、弊社ではAIの有効活用を推進するべく、クライアントに対してAIセミナーを実施しています。
弊社事例 |
ライオン株式会社様にAIを効果的に運用していただくために、AIセミナーを実施しました。これにより、AIへの知識を深めていただくことができました。 |
AI導入ならVAREALへご相談ください
AI導入のご要望は、VAREALにご相談ください。
コンサルティングから導入支援まで一貫してサポートいたします。もちろん、各ステップにおける一部分での支援も可能です。
画像認識や動画認識、言語認識や音声認識といったさまざまな用途に対応いたします。
AI教育やトレーニングサービスにも力を入れておりますので、導入後のサポートも充実しています。
さらに、VAREALはAWSのコンサルティングパートナーです。
そのため、弊社の強みとしてAIの独自開発だけでなく、AWSを用いたAIエンジンの企画をサポートできます。
AIに関する疑問やお困りごとがあれば、ぜひVAREALにお問い合わせください。
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